日本で初めて自然農法登録された 完全無農薬の極上マンゴー

日本で初めて自然農法登録された 完全無農薬の極上マンゴー

Farm Letter vol.025 沖縄マンゴー生産研究会


トロピカルフルーツの代表格・マンゴーは果物の女王と呼ばれ、世界中で食されている。以前はメキシコやタイ、フィリピンなど海外からの輸入が多かったが、近年では国内生産量が増加し、平成元年の10倍にも達するという。マンゴーといえば宮崎県のイメージが強いが、生産量第1位は沖縄県で、国内シェアのほぼ半分を占める。
 沖縄県では明治30年に農業試験場で栽培され、主に露地栽培された。開花の時期が梅雨にあたるため結実しにくかったが、その後、ハウス栽培技術の普及で安定して生産されるようになった。日本で最もポピュラーな品種は、アップルマンゴー(アーウィン種)だ。
 マンゴーは減農薬で栽培することが難しい作物で、沖縄県の農薬使用基準は23回(平成29年1月現在)である。そんな状況のなか、沖縄本島の最南端に位置する自然豊かな糸満市で、沖縄マンゴー生産研究会の大城新栄さんは、化学肥料・除草剤・消毒剤を一切使わず、高い技術力で完全無農薬マンゴーを丹精込めて育て続けている。



濃厚な甘さ、ほどよい酸味。 体にやさしい完熟マンゴー

【沖縄マンゴー生産研究会 大城新栄さん】


 

研究してたどり着いた草生栽培

元々漁師で、娘の名前をつけた船「さおり丸」で200キロ弱のマグロを一本釣りしたこともあります。漁には毎日出られないので、その合間の時間を利用できればと、30代のころに農業も始めました。露地のさとうきび畑だった場所にハウスを建て、最初は農協指導でマンゴーを植えました。
 木が小さいので柱の下にも植え、木の間にキャベツや白菜、メロン、ゴーヤなどを次々植えたのですが、マンゴーがこんなに大きく育って歩けなくなるなんて夢にも思いませんでした。収穫するには這ってカゴを前に出してから自分も進まなければなりません。これでは仕事にならないと真ん中や樋の下は全部抜いて人にあげ、残ったものは潰したんです。それが正解でした。狭いときは身動きが取れないうえ、実がたくさんつけられなかったけれど、減らしたら逆に収量が上がりました。
 また、農協では草を生やしてはいけないことになっています。除草剤で枯らして草一本も生やさず、草は持ってきて敷きなさいといわれました。マンゴーが落下しても傷つかないように敷き草は必要ですし、乾燥を防ぐ意味もあります。だったら、草を生やして刈って置いておく草生栽培でいいのではないかと思いました。実践されている方が大宜味にいると聞いて、わざわざ見に行き、理にかなっていると確信しました。マンゴーを植えて5年経った収穫のときから農業一本です。


アミノ酸の酵素液を手作り

 肥料はアミノ酸と牛糞、後は米ぬかです。農薬は一切使いません。マンゴーは山に生えているものだから、落ち葉だけでいいと百も承知ですが、ある程度の大きさを早めに仕上げるために有機肥料を使います。手作りのアミノ酸の酵素液が一番いいですね。魚のアラと糖蜜と海水を1:1:3の割合で混ぜて半年間おくと、いい肥料になります。500〜1000倍に薄めて毛虫対策にも使います。人間の体にもいいし、植物も好みます。
「マスクもしないで農薬をかけてる」と、よく笑われました。自家製酵素液だと知って、「僕らにも教えて」という人には教えましたが、毎日かき混ぜなくてはいけないのが面倒なのか、ほとんどの人がやめています。作物に週4、5回農薬をかける人もいます。毎日朝晩、薬をかけて上等なものを作って高く売り、自分や子どもたちの食べ物は無農薬で別に作る友だちもいます。体に悪いとわかっていても、きれいなじゃないと売れないから農薬をかける。バランスがおかしいですよね。虫食いはいやだけど、その理由を考えるべきです。


 

積算温度が収穫の決め手

毎年9月末ぐらいから整枝や枝の剪定、草刈り、強制誘引を行います。摘果作業をしながら果実を麻ひもで吊り上げ、太陽を当ててきれいな色にします。肥大して色が変わってきたら袋をかけますが、2万個以上の袋がけに1カ月ぐらいかかるため、収穫しながら袋をかけることもあります。日照時間や積算温度で熟度が決まり、収穫のタイミングは花が咲いた日により異なります。袋がけしてしまえば台風が来ても心配ありません。台風は避けられないけど、予防はできます。40度のハウスの中で、暑くても休んでいる暇はありません。
ピンポン玉大のミニマンゴーが熟し始めると、収穫開始のサインです。ミニマンゴーは品種ではなく、受粉していないマンゴーを指します。皮ごと食べられて、すごくおいしい。ミニマンゴーが熟しているなあと思ったらパクリと口に入れます。
 アップルマンゴーの収穫は7月中旬くらいから始まります。農協は八分熟で収穫しますが、まだちょっと堅さがあります。我々は完熟まで待って、収穫した日か翌朝に発送するので、届いたらすぐにおいしく食べられます。ブルームという薄い白い粉がうっすら果皮に付いて少し毛羽立っているのが新鮮な証拠で、最高の状態です。妻の94歳になる母は収穫を楽しみに手伝いに来てくれます。
 糖度は15度以上あれば十分で、17度ぐらいがベストです。糖度23〜27度の品種も作っていますが、甘すぎて酸味がないと、おいしくありません。


金肥は絶対に使いたくない

 今年(2018年)はアップルマンゴーのハウス7棟のうち4棟がほぼ全滅で、ほとんど実がつきません。約30年やっていますが、こんなことは初めてです。周りも同じような状況で、「1年くらいは飯食わないで我慢しよう」と、冗談で言い合っています。
 一節をパキッと手で折って新しい芽を出す芽かき作業をすると、再来年には実をつけます。ハサミで切らないのは、ばい菌がハサミから入るからです。消毒しながら使うのならいいのですが、このあたりの豊見城地域はみんな手で折る方式です。
有機自然栽培に切り替えて苦労は感じません。喜ばしいのは、アザミウマという虫が原因で発生する病気が草生栽培でなくなったことです。農薬を使っているときは木の調子も良くなかった。化学肥料で作物を大きくできても、えぐみがあって、食べたらすぐわかります。化学肥料は昔、金肥と言われていましたが、絶対使いたくないですね。
 これからもっと仲間を増やしていきたい。わかる範囲のことを伝えていくのが我々の希望です。体が動く限り、農業を続けていきたいですね。自分で考えてやれるのは一番嬉しいことです。世界旅行もしたい。生きている間に行けるといいなあ。


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Side story

インドナツメを冬場の主力作物に
India Natsume as a main crop in winter

大城ヨシ子さん / Yoshiko Oshiro

レッド・グリーン・オレンジのキーツマンゴーやイエローマンゴーも育てています。肉厚で糖度が高いレッドキーツは8月末から9月に収穫し、追熟します。600グラムほどのアップルマンゴーに比べ、キーツマンゴーは1.5キロ以上になります。
アテモヤ・グアバ・アボカド・ズッキーニも作っています。『現代農業』という本に「西洋かぼちゃ」としてズッキーニが載っていたのを見て、種屋さんにお願いして取り寄せてもらいました。うるま市の市場で最初のころ、「それ何ね? きゅうり?」と言われたけど好評で、いまは作っている人がたくさんいます。  去年始めたインドナツメをこれから増やしていくつもりです。友だちのところで食べたら梨のようでおいしく、2、3本分けてもらいました。マンゴーが終わって花芽を吊り上げている最中の2〜3月に出始めます。在来種はトゲが長くて、摘果・誘引・吊り上げ作業が大変ですが、ミニトマトやブロッコリーに替わる冬場の収入として、もっと専念してみたいなと思っています。




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