









鶏の自由を尊重し、平飼いで慈しむ
日本の養鶏場の約94%は採卵鶏をバタリーケージで飼育している(2020年・国際鶏卵協会)。ワイヤーの檻を連ねて幾段にも重ねる鶏の集約飼育方式で、アニマル・ウェルフェアという動物福祉の観点から欧州連合(EU)では2012年に禁止されている。米国ではマクドナルドなどのグローバル企業が率先してケージ卵を平飼い卵に切り替えると宣言、オーストラリア、タイ、韓国など、各国で抑制の動きが強まっているが、日本には最低基準がない。
ケージ飼いは作業効率がよく、コストを削減できるため、卵の大量生産と安価な供給を可能にする。日本での鶏1羽あたりの標準飼養面積はB5判ほどで、身動きが取れないほど狭い。病気を予防する目的で抗生物質や抗菌剤を与えられ、ストレスがほかの鶏への攻撃行動につながりやすく、80%以上の農家が鶏のクチバシを切断している。
北海道長沼町で養鶏を営む「ファーム モチツモタレツ」の高井一輝さんは鶏が自由に過ごせるよう鶏舎内で放し飼いにし、妻の真実さんとともに大切に育てている。通常は多数必要なワクチンや抗生物質なども使用しない。
ケージフリーの卵しか取り扱わないと表明する大手企業が増え、ケージ飼育廃止の世界的な潮流が日本にも浸透すれば、いまだ少数派の平飼いが増えていくだろう。日本の養鶏業は大きな転換点を迎えている。

日本の養鶏場1戸当たり平均飼育羽数は7万羽以上だが、ファーム モチツモタレツでは約2000羽の鶏たちを夫婦ふたりで世話している
ファームモチツモタレツの特徴
◉ 生まれたてのひよこをに入手し、そこから健康な体を育てていく
◉ 鶏の個性を観察し、それぞれが快適に生活できる環境を整える
◉ 鶏の健康を考えた自家製の餌のみで育てている
◉ 美しいレモンイエローの黄身と、見事な白身のハウユニットが特徴
健康な鶏の鮮度抜群の自然卵を味わってほしい
薬を使わず、新鮮な飼料で平飼い

生まれた当日か翌日のひよこのときから育てます。成長した鶏はワクチンや抗生剤を処理されているからです。薬に頼らず、健康的に育てるのがこだわりのひとつです。4月と9月、半年ほどずらして2回ひよこを迎え、年間通して卵の量を安定させます。ひよこを育てるには温度と湿度が重要で、適正に維持しながら換気します。
鶏舎内は放し飼いで、止まり木がたくさんあります。日陰で育てるのがセオリーですが、僕は日当たりを重視しています。眩しければ板を貼った日陰で休めますし、ある程度乾燥していないと、すぐに風邪を引いてしまうからです。
飼料の鮮度にもこだわっています。カビが生えた米糠など、変なものは食べさせません。穀物は擦るとすぐ劣化するため、丸麦のまま与えます。近郊で焼いてもらっている良質な道産きな粉など、95%ぐらいは新鮮で安全な地元の素材です。鶏の健康のために何が必要かを考え、手間暇かけて自家配合し、ナチュラルに育てています。
課題は飼料の値上がりと休養

最近は飼料の値上がりがすごいことになっています。仕方なく、卵の値段を25%ぐらい値上げしました。鳥インフルエンザで卵不足になったことを機に、卵自体の価値が底上げされたのは運がよかったです。振り返ってみると始めたときからのお客さんばかりで、値上げも許してくださり、皆さんのおかげでこれまでやってこられました。
初年度と2年目は土日も休まずに実働5000時間、ふたりで1万時間超えました。帰ったら気絶するような生活が2年間続き、超絶スーパーブラックです。朝食は食べず、起きて30分後には鶏舎にいます。 朝6時半から、配達の準備があるときは21時や22時、ないときは19時か20時まで働き、1日1.5〜2食です。体力的にきつくて、ふたりとも夜ご飯を食べながら寝てしまうこともあります。同じ5年間は二度とできません。
有精卵の表示基準であるメス20羽に対しオス1羽の割合で、1500から2000羽が3棟の鶏舎にいます。この規模で人を雇うのは精神的にも金銭的にも負担が大きすぎて無理かもしれません。 僕は配達で外に出られますが、かみさんはずっとここにいるので、視野が狭くなってしまうのもよくないですし、休養や息抜きが今後の課題です。大きくするつもりはなくて、僕らはふたりで世話して売るサイクルをできる限り長く続けていきたいです。
養鶏だけではなく、音楽でもなんでも一生懸命がんばると楽しいものですよね。適当ではなく、きちんと働いているからこそ、お客さんに会って話して卵の評判がいいと嬉しいし、やっていてよかったと思うのはそういうときです。「いつ食べても必ずおいしい」というお客さんの言葉が本当に励みになります。単純ですね。
さらに詳しく(ファームレターvol.55 ファームモチツモタレツ)
商品名 | 自然卵(有精卵) |
ひよこ | 生まれた日に購入 |
飼料 | 自家製(原材料は北海道産) |
販売 | 通年 |
消費目安 | 到着後約2〜3週間(冷蔵保存) |
生産者 | ファームモチツモタレツ |
代表者 | 高井一輝 |
住所 | 北海道夕張郡長沼町 |
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