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記事: 卵ラン農場ムラタ farmletter vol.34

卵ラン農場ムラタ farmletter vol.34
北海道

卵ラン農場ムラタ farmletter vol.34

 土と創る.34 長沼平飼い有精卵 (PDF版ダウンロードはこちらから)


レモンイエローの黄身が安全の証。 村田博美の見識


健康な鶏から産まれるおいしくてきれいな卵たち

 卵かけご飯、卵焼き、目玉焼き、茶碗蒸しに親子丼など、料理のレパートリーが幅広く、日本の食卓に欠かせない存在の卵。栄養満点な完全食なうえ、戦後から今日までの70数年間、価格がほぼ変わらない。国民一人当たりの年間鶏卵消費量は333個で、メキシコに次いで2位を誇る(IEC=国際鶏卵委員会・2017年次統計)。
 北海道の広大な石狩平野に位置し、札幌と千歳のほぼ中間にあたる長沼町は道内でも有数の農業地帯だ。都市近郊の立地条件を生かし、グリーン・ツーリズム構造改革特区の認定を受けている。長沼町で農家民泊も行なう卵ラン農場ムラタの村田博美・由香里夫妻は、約1600羽の鶏を平飼いで健康的に育てている。道産小麦と有機の生米ぬかを主体に、魚粉や牡蠣貝殻、きなこなどをブレンドした自家配合の餌にこだわり、輸入とうもろこしや抗生剤、添加物、着色料などの薬剤は使用しないため、黄身の色は自然なレモンイエロー。北海道洞爺湖サミットで各国首脳に提供された品質を保ち続けている。

清潔な鶏舎内で妻の由香里さん、愛犬のバウと。バウは他の3頭とともに、アライグマや狐から鶏たちを守る

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厳しく豊かな自然環境で 穏やかに命を育む


青年海外協力隊員から農家へ

 養鶏を始めたのはもう30年くらい前です。何年か勤めた後、食糧増産が急務だった独立後のバングラデシュに青年海外協力隊の農業支援隊員として行きました。農業をやりたいという思いで日本に戻り、ニュージーランドや南太平洋から野菜を入れる仕事にまず携わったんです。ちょうどバブルの頃で食の安全に関心が高まりつつあり、外国産と競合しない有機野菜を作ろうと思いました。  たまたま土地を貸してくれた余市で有機野菜を一生懸命作ったけれど、思うように売れません。近所で養鶏をやっている人に出会ったのは35歳くらいのときです。有機野菜のために作っていたぼかし肥料と彼の鶏の餌の材料がほとんど同じで驚きました。鶏を飼育して卵をとり、鶏糞で有機野菜を作る循環型を目指しましたが、どっちつかずの中途半端ではうまくいかないと気づきました。  農業者として一生やっていくには最低800から千羽は鶏がいないと生活が成り立ちません。鶏のことを何も知らなかったので、自然卵養鶏会で平飼い養鶏の先駆者から教えてもらいながら鶏一本に集中し、最初から千羽でスタートしました。


生まれたてのひよこを大切に育てる


 隣町の孵卵場で午前中に生まれたひよこを午後に取りに行き、育てています。昔は誰でも生まれてすぐ引き取りましたが、いまはいろいろな成長段階のひよこを専門業者が扱っていて、値段は高くてもあと1週間か10日で卵を産む鶏を買うという話を最近はよく聞くようになりました。僕らは将来的にも一切薬を使いませんから、工夫をしながら丈夫なひよこに育てていかないといけません。
ヨーロッパで品種改良されたボリスブラウンという鶏で、羽毛が赤いのはメス、黄色いひよこはオスで白くなります。雛は普通、35〜39度くらいの温度で管理し、生育に従って徐々に温度を下げなさいと本には書いてありますが、うちでは温度計を見たことがありません。鋸屑と米ぬかの自然発酵の床暖を準備して、穏やかにひよこを守ります。少し大きくなったら、固まって圧死しないようすのこを下に敷きます。鶏たちは最初はいやかもしれませんが、仕方なく乗るうちに癖がつきます。
 密飼いは湿気も出て病気の元です。鶏舎の中は、鶏たちがストレスをためずにのびのびと動き回れるよう、一坪当たり10~12羽くらいの薄飼いで開放しています。乾燥させれば臭いもありません。走り回ったら内臓も足も丈夫になるでしょう。そうやって育てて初めて薬を使わなくてもいいような鶏になります。生き残るには試練も必要です。


鶏舎の床を清潔に保つ工夫

 北海道で平飼い養鶏をする多くは小麦を餌にして、ポストハーベストで薬を使う輸入とうもろこしを使いません。地元の飼料米も手に入ります。着色料を使わないから卵の色は薄い。おいしくするための餌配合を自分なりに工夫するので安全で、食べたときの甘さなど味が全然違うといわれます。
 鶏の病気を防ぐには乾燥した状態で育てる必要があるので、藁を敷いています。よい状態をキープするために朝夕、麦をばら撒きます。鶏が麦を探して足で藁床をかき回すから、足回りも床もフンでべたつかず、床がドライになります。足の汚れをきれいにして巣箱に上がっていきますから、卵も汚れません。卵の表面には雑菌が入らないように保護膜がついていて、それを洗って落としてしまうと日持ちが悪くなります。だから、卵をできるだけ汚さずに産卵させることが理想なのです。
 秋を迎える頃に産卵デビューし、1日に1400個ぐらい産みます。3〜6月は鶏にとって条件がいいから大量に産みますが、北海道といえども夏は気温が高くなり、落ちてきます。年間を通して卵の数を一定に保っておくよう心がけています。


野菜ではなく鶏を選んで

札幌近郊の大規模な平飼い養鶏ですから、札幌の有名ホテルやマスコミに影響力のあるシェフがうちの卵を使ってくださった関係で、営業に苦労したことはありません。2008年の北海道洞爺湖サミットの食材にと紹介もしてくださいました。
 新規就農で30年、振り返ってみるといくらかでも鶏を置いていれば残っていけると感じます。僕自身も最初は有機野菜をやってみたけど、北海道は何か月か畑が動かない時期があり、1年分を稼ぐのに苦労します。鶏は日々のお金はそんなに大きくありませんが、1年中動きます。ただし、1年365日、鶏たちの健康管理に気を遣い、病気を予防し、よりよい環境づくりに気が抜けません。
 ここまでなんとかやってこれたのは、嫁さんのおかげです。ひよこを育てるのは彼女の担当で、僕は卵を集める仕事という風に分業しています。雛が元気にちゃんと育ってこそ、しっかりした卵ができます。時間を惜しまずに、ひよこの世話をすることは、基本中の基本です。僕たちは薬を使わないから、毎日が大変です。手を抜いても鶏は育ちます。好きじゃないと、ここまでこだわれません。やり続けるのは困難だけど大事なことです。


鶏の気持ちを感じながら、愛情あふれるひよこ育てる

村田由香里さん

2月の200羽から始め、5月まで400羽ずつ増やします。生まれて3日ほど、腸を丈夫にするために玄米を直撒きして食べさせ、後で人工ミルクのような雛の餌を与えます。2・3月は緑がないので、雪の下から持ってきた笹の葉っぱを、春から晩秋はクローバーをあげます。毎日の緑の時間は貴重な思いやりの時間です。
成長に合わせ、箱の囲いを開いたり、止まり木を用意したり、餌箱も3段階ぐらい変えます。次第に冒険して危険な目にもあいますが、成長を見守るのが楽しいです。雛が元気に育ち、自然の摂理とはいえ順番に卵を産んでくれるのはすごいことです。
札幌で看護婦をしていた頃、長沼に山菜採りに来て、緑が広がる田舎の景色に魅せられました。養鶏会に電話をして紹介されたのが主人です。平成7年から23年、この地で雛を任されています。ただ好きだというだけで、見て覚えて感じて、経験を積み重ねてきました。大好きな鶏や犬たちと、この環境を維持できているのは主人のおかげです。


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