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記事: さとう農園 farm letter vol.53

さとう農園 farm letter vol.53

さとう農園 farm letter vol.53

 土と創る.53 山形里芋 (PDF版ダウンロードはこちらから)

閃きと縁と実行力で山形の里芋と芋煮の魅力を発信

  1世帯当たりの里芋の年間支出金額が日本で第1位の山形県。全国平均の約2.6倍ほどで、年間を通して里芋の需要が多いが、生産量は意外にも全国21位だ( 2021年) 。
 創業以来100年、山形県山形市で里芋を取り扱ってきたさとう農園4代目の佐藤卓弥さんは、農薬・化学肥料・除草剤を一切使わず、大切に自社栽培された貴重な里芋で、地域を支え、元気づけている。毎年山形市で開かれている「日本一の芋煮会フェスティバル」で使用する里芋を栽培、洗い加工して提供し、実行委員長として大会の運営を務めた実績を持つ。
 2023年にはキッチンカーという新たな武器を手にして東京のキッチンカーグルメ選手権に参戦、見事グランプリに輝き、百台の頂点へ。テレビの人気番組でも取り上げられ、山形の芋煮とさとう農園の名を全国に轟かせた。
 里芋畑をうずまき状にしたり、ナスカの地上絵やインドの神様を畑に再現したり、収穫した里芋を引っさげてペルーやインドで芋煮を振る舞ったり、既成概念に囚われることのない、佐藤さん夫妻の自由奔放な挑戦は続く。


「うちの会社の名前はさとう農園なのに農業してないよね。無農薬の里芋がないなら作れば」という妻のみかさんの一言で、お客様からリクエストされた無農薬の里芋栽培が始まった。「大変でしたけど、できたお芋がおいしかったんです。小さい子どももおばあちゃんたちも、年齢も国籍も問わず、おいしいとみんな笑顔になって、私たちも元気をもらいます」と、みかさん

→さとう農園の商品ページへ


「寿司天ぷら芋煮」を世界共通語に

【さとう農園 佐藤卓弥さん】

うずまき畑で子孫繁栄

  九州、四国、関東、東北と産地リレーをしながら1年を通して里芋を仕入れています。洗い加工して販売するのが家業だったので、里芋を作ったことはありませんでした。「無農薬の里芋が欲しい」という1本の電話をお客様からいただいたことを機に、農業がスタートしました。
 企業の農業参入は困ると、不便で土質が悪い小さな畑しか借りられません。藪で車が入れないような西蔵王の山奥で30アールの耕作放棄地を畑にして、たくさん失敗を重ねながら、農薬も化学肥料も除草剤も使わず、2年前からは肥料も使わない自然農法で里芋を育てています。
里芋は親芋ができて子芋、孫芋、ひ孫芋と続いていくため、子孫繁栄の象徴といわれます。渦巻状に畝を作った西蔵王の里芋畑で定植&収穫祭を始めたところ、参加してくれた友だちに赤ちゃんができたんです。子どもを半分諦めていた友だちで、里芋畑に里芋を植えたら子宝に恵まれたという話が評判になりました。
 自然に触れてストレスを抜き、穏やかな心で里芋を育てたおかげか、その後も何人か続き、うちにも子どもができたから面白いですよね。


里芋畑にナスカの地上絵出現!?


 農業を始めて14年になりますが、2017年に90アールという広い畑を管理できることになりました。この感謝の気持ちを表現して世界に発信したいと閃いたのが、里芋畑の地上絵の発端です。
 山形大学で研究している世界遺産のナスカの地上絵を原寸大で再現したら話題を呼び、ペルーの「山形県人会設立100周年」の記念式典で、この畑で収穫した里芋を使って芋煮を振る舞うという不思議なご縁をいただきました。
 山形のソウルフードの芋煮を世界中の人に知ってほしいと始めた事業が初年度に実現したんです。まるでモーゼの十戒のように、困難や問題点が自然にクリアされて道が開ける、そういう体験をさせてもらいました。
 ペルーに芋煮が届くようにと先人の方々に操られていたのかもという思いが強くなり、地上絵で世界に発信し続けようと思うきっかけの年になりました。


インドが教えてくれた食の融合

 ナスカの地上絵を続けて4年目の年、猛威を奮うコロナウイルスの収束を願い、災いを断ち切るインカの神様「トゥミ」を、翌年には中止された芋煮会のマスコット「芋煮マン」を、コロナ3年目は夢を叶える象として有名なインドの「ガネーシャ」という神様を畑に描かせてもらったところ、今度はインドの子どもたちに食事提供するご縁につながりました。
 オリジナルの山形の芋煮を喜んでくれたペルーと違って、インドは宗教上の理由で牛肉が使えず、規制も多かったのですが、最終的にはインドのスパイスが調合された芋煮カレーを振る舞ってきました。それぞれの国の文化、食材、調味料と芋煮がどう結びついて溶け込んでいくか、その変化がすごく楽しみです。韓国に行ったら辛い芋煮など、世界それぞれの国で芋煮が進化していくことが面白い。
 芋煮には醤油味も味噌味もあり、食材も地域によって違います。広い心で受け入れる山形の人の気質が各国の食文化との融合には必要です。「これを組み合わせたら新しくこんな風になって素晴らしいね」という感覚が大切な気がします。
 世界中に多様な芋煮を届け、また持ち帰ってきて、山形と世界を芋煮で橋渡しできたらと考えています。


「いも煮ジャパン」として活動

 芋煮は山形のソウルフードですが、日本代表の「日本の芋煮」として世界に発信していこうという意味合いで、「いも煮ジャパン」の活動を始めていきます。
 12月に完成した道の駅「やまがた蔵王」にキッチンカーを装備して、遊びに来てくれた方に山形の芋煮を食べていただきます。暖かくなる2024年春からは芋煮広場がオープン予定です。将来的には、いつでもおいしい芋煮を楽しめるお店や里芋の工場を体験できるようなテーマパーク化を目指したいですね。
 東京で開催されたキッチンカーグルメ選手権2023で山形の芋煮が金賞のグランプリをいただきました。我々が試行錯誤して育てた里芋をおいしいと言ってくださり、農業をやってきたことが必然だったと感じた瞬間でした。
 山形の里芋は芋煮の主役で、地域の宝物です。農業して加工して販売していく流れが普通ですけど、我々は加工者から生産者になった逆パターンで、今度は芋煮を作るという飲食業へ挑戦します。いろいろな方を巻き込みながら、楽しく里芋事業をしていきたいなと思います。


モットーは「もっと楽しく、豊かに」

 農業は大豊作のときに「やった!」と喜べるのが理想です。でも、大豊作になると値段が下がってしまいます。収益がどんどん悪くなる仕組みや流通、販売を変えていかなければいけないと我々は考えています。
 里芋の面積はいま5ヘクタールで、私が生きているうちに十倍もしくは百倍ぐらいにしたいです。
 日本だけではなくて、海外に芋煮の店舗をフランチャイズしたい。山形オリジナルの芋煮とご当地の芋煮をセットで展開して、「寿司天ぷら芋煮」を世界共通語にしたいんです。最終的にはどの国に旅行しても芋煮というメニューがある世界になることを願っています。世界中に発信していくために、原料はやっぱり百倍必要ですよね。
 サッカーのカズさんや野球の野茂さんのように、まずは我々が突入してみて、インドなどハードルの高そうな国でもベジ芋煮を楽しんでくれると知ると、次の人たちがやりやすくなります。後に続いてもらえたら芋煮はどんどん加速して、「寿司天ぷら芋煮」の世界観が夢ではなく、現実になっていくのではないでしょうか。


 「西蔵王の畑には重機でも取り除けない巨石が埋まっていました。渦巻状に畝を作る古代農法や銀河の渦巻パワーをヒントに、巨石から渦を巻いちゃえばと卓弥さんに気軽に提案したら、うずまき畑が誕生しちゃいました」(佐藤みかさん)

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